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僕たちの失敗(1) 一律賞与

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 A社長は、正社員2名とパートタイマー2名の小さな会社の経営者です。脱サラして5年になりますが、なかなか軌道に乗らず、サラリーマンの時の年収にはるか及ばないどころか、運転資金の捻出に苦心する有様です。

 夏季賞与の時期も近づいて来ましたが、資金繰りは苦しく、どうしたものかと悩んでいました。また、A社長は、昨年の冬の賞与の失敗が陰を落とし、社員のモチベーションに問題があることも気がついていました。その失敗とは?振り返って見ることにしましょう。

 昨年の夏、大口取引先との提携を解消された結果、A社長は最大の危機を向かえました。不動産を処分し資金を作り、新規先のスポット案件で何とかしのぎましたが、社員には夏の賞与を払えませんでした。創業から赤字続きであったものの、少額ながら支給してきた賞与でしたので、社員もショックだったと思いますが、A社長にとっても情けなく悲しいことでした。

 冬の賞与の時季がやって来ました。A社長は、目先の金になる仕事に没頭、何とか50万円の賞与資金を確保しました。通常ですと、社員の業績評価を行い、支給額を決定するところでしたが、二人に同額の賞与を支給してしまいました。

 日頃は「賞与は業績配分」が持論のA社長が、なぜこのようなミスを犯したのか?その時、A社長の頭を占領したのは、①経営危機のときに辞めずに頑張ってくれた②夏の賞与を払えなかった、という懺悔の気持ちもしくは負い目といったものでした。
 
 A社長も、B社員とC社員の業績、能力が開き始めていることは気づいていました。売上高では2倍近い差になっており、顧客の深耕・グリップ力でも差があることは、日常の顧客の反応から明らかでした。通常の査定であれば、少なくともB社員35万円・C社員15万円のところだと思っていたのですが・・・。結果として、A社長は夏の賞与の失敗を引き摺り、冬の賞与も大きな失敗をしてしまったのです。

 B社員は納得できませんでした。会社の危機を支えた自負がありましたし、事実、重要顧客を多く担当し、売上はC社員の倍なのですから・・・。売上表を見るたびに、逆に気が滅入ってしまうのです。金の問題だけではなく、正当に報われないことが、やり切れませんでした。しかし、気持ちを切らすことなく、持ちこたえています。

 C社員は不満でした。賞与の額も少ないし、夏の分も足りないと思っていました。「頑張っているのに・・・」が口癖になってしまいました。サービス業は、お客様が対価を払ってこそ仕事なのに、それが理解できません。自分が損益分岐点以下の業績であることもわかりません。高付加価値の新規事業の話にも耳を傾けません。自分の業績見直す機会を奪った代償は大きかったようです。

 A社長の失敗は、余りにも初歩的ですが、それだけに多くの会社で行われているのではないでしょうか?

 会社に雇用されて賃金を貰う以上、頑張るのはいわば当たり前で、それは大前提として、きっちり個人の業績を評価して、賃金にしろ、賞与にしろ、支払う必要があります。それを誤ると、優秀社員に十分報いることができないばかりか、不振社員に気づきの機会を与えることがでず、全体のモチベーションを下げ、業績を下げることになります。

 A社長の「わかって欲しい、わかってくれるはず」という気持ちはわからないでもないですが、人間はやはり「自分なり」の理解をするものです。特に社長と社員の間には、暗くて深い川が流れているようですから、タイムリーに明確なメッセージを送ることが肝要です。

「僕たちの失敗」に共通な教訓は、「過ちを正すに、はばかること勿れ」です。過去は変えられませんが、未来は変えられます。過去の延長線上にいるとミスを拡大させることにもなりますから、それを断ち切って決断を下すことが求められます。世界中のA社長が同じ失敗を繰り返さないように祈っています。
by e-roumu | 2007-09-15 00:29
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